記事を読む前に確認しますね
読んだか?
この本、構造が面白いというのが大前提にあるせいで、初見の感動が正義すぎる
2026年映画公開予定らしいしその前に読んじまったほうがお得としか言えん。まっさらな状態で、黙って本を手に取って、勢いで読んでしまおう、私はそうした それがよかった…
まあ、出た当初から周りの人みんな読んでたし騒がれてたし評価されているので、じゅうぶんな考察、考証、批評、高度な視点での素敵な解説などはすでにインターネット中にごまんと溢れているはずです。
私はそんなに読書趣味ないし、お勉強大嫌いのカスなので、そういう頭のいい感想は他の皆様に委ねていこうと思います。
いい感じにアコーディオンにしまいながら頭の悪い感想を言わせてください。よろしくお願いします。
当たり前だけどめちゃくちゃネタバレですよ
ちなみに、私は紙の本を買いました。文庫じゃないとはいえ最近の本、マジでたっけえ〜!電子書籍と違う部分(おもにレイアウトやフォントに関する話?)がもしかしたらあるかもしれないのはご了承ください。
この小説は現在と過去の話が交互に挟まる。主人公が宇宙で奮闘するメインのストーリーに対して、なぜ地球が、自分がこんなことになったのか記憶がフラッシュバックして補完されていく。「現在のこの行動によって過去のコレを思い出したんだな」ってわかる文脈なのでシームレスに感じた。
あらすじのことをこのように要約している。
時系列
とりあえず地球がヤバいです。知性を持たぬ動く点P集団により地球が冷えっ冷えになってしまう〜!
学校で科学を教えてるグレース先生!元は研究者になりたかったし論文も書いたことある!ある日なんかヤバい権力者の女につかまった!なんかめっちゃ研究させられて大変!
数々のアクシデントののち選択の余地も与えられず眠らされロケットに詰め込まれたのはグレースその人であった。そして物語の冒頭のシーンへ…
その子の名前をロッキーと名付けました(花屋の娘かい)
利害一致!利害一致!協力!協力!
俺と地球とロッキーを天秤にかけるぜ
グレースとロッキーは生きているということと地球の顛末は不明なことだけ伝えておくぜ
詳細はかなりぼかした。オチは賛否あるようだけど、私はこの物語を一人の人間の数奇なる人生として読んでいるので、そうか〜!となった。
グレースが宇宙に放り出された時点で、グレースの視点から地球のことなんてなにもわからない、そして私もグレース視点の物語しか知らないので受け入れていた。
思った以上に読みやすさ抜群のSF入門ストーリーだった。
SFが苦手、難しそうと思ってる私でもすんなり理解できて読めた。
以下の理由が大きいなと思っている。
①日本語訳が優秀/主人公を好きになれる
当然これは作者自身が持つユーモアの良さがある上で、日本語訳が絶妙にオタク心に寄り添っている感じがする。たとえば「僕」を「ぼく」とするだとか。そういうコントロールによってロッキーがかわいすぎるし、グレースがかなりおもしれー愛嬌男になっていると思う。グレース好きになっちゃうだろ、30代半ばの子供好き枯れかけ天才ユーモアおじさん(おにいさん)、萌えだろ。萌えとかは置いといて、人並みに臆病で、ズルくて逃げ癖があって弱さを見せても、善い人であることは避けられない。応援したくなる人間性をしている。
②登場人物も場所も少ない
枠組みとしては宇宙規模だし、地球を救うミッションなので壮大だ。その本筋の方も面白い。なんかもうちょっと人間増やして人間中の協力戦が起これば、シン・ゴジラ見てる気分になれそう。
ただ本質は主人公のグレースという人間の選択と奮闘、そしてグレースとロッキーの異種間に生まれる友情であり、かなりのヒューマンドラマ。人間と異星人がそれぞれ閉鎖的な空間で孤独に過ごしていて、邂逅して、ほかの命なんて全然ない場所で協力するのだから、そりゃ小規模である。
③グロくない、怖くない、納得できる
正確には主人公たちにとってそういう要素はある(同僚の死体とか、異星人がいると確信した瞬間とか、タウメーバの脱走とか)けど、読者にとってはそれらが理路整然と伝えられているのであんまそういう緊張感はない。
そして明らかにフィクションであるエリディアン、アストロファージ、タウメーバもろもろ、その構造や文明の理屈だとか、捕食という解決法、実験の仕方など、なんというか…高校生までになんとなく受けた授業(理科・物理・生物・化学、数学とか)あるいは今まで触れてきたサブカルチャーで知れるようなことが基礎にある感じなので、完全に理解できなくてもなんとなく知ってて納得しやすい理屈!と思った。ぶっとんだハイテクノロジーも出てこないし誰も知らなそうな専門用語もあんまり頻発しない印象。ちゃんと本来の意味でサイエンスフィクションはしてると思う。
以上の3点が個人的に読みやすさに響いたと思っているのだけど、難しい言葉をいっぱい言われたい人とかスリラー・ミステリー・サバイバル要素によるカタルシスが欲しい人には泥臭すぎたり物足りないのかも。この作品はそういう層からはつまんねーと言われてるイメージある。ゆえに初心者向きなんだろう。
なんといってもグレースのひとり語りとロッキーと出会ってからのバディ要素がメインになるので、どうしてもここふたりが大好きになっちゃうよ〜〜〜って感じ。前述の通り日本語訳が仕事しすぎている。
ロッキーのセリフは翻訳システムを通している表現なのか、フォントが変わるしカタコトでとても愛くるしい。
嬉しい時に「しあわせ!」強調は3回。つまりめっちゃうれしいと「しあわせ!しあわせ!しあわせ!」こんなかわいいことあってたまるかよ。言葉というより「音」というのもいい。言葉がわからないうちは全てのセリフが「♪♬♫」みたいなことになっていたし。
私はそもそも人間と異形の協力プレイに弱い。上巻の終盤で「宇宙人と会うの!?!?!?!??!」とかなりうれしいサプライズをされた気持ちになった(その時点では敵か味方かわからんのだけども)
しかしエリディアン、持ち合わせている倫理観や感情というものが地球人とあんま変わらなくてよかったな…映画エイリアンのエイリアンならば終わっていた。
グレースはとことん善い人だよというのも前述したけど、まず自分が何者かわからないうちから冷静で前向きで冗談をいいまくってお茶目で真面目だったわけで…30代の青年〜おじさんになりかけとはいえその若さでその落ち着き、強がりだったとしてもすごい。あと普通に有能だろ。逃げ癖的な部分の性格を考えると、まわりのせいにできない状況になってやっと真価を発揮するタイプなのかもしれないけど。
相当な理不尽で此処にいる事を思い出しても、生きたい、救いたい、探求したいと人間らしい欲求を持ちながら悟ったかのように目的に向かって遂行している。強い。
もちろん物語の中で成長した部分はあるんだろうけど、「人間として生まれ変わる」って感じでもないように思った。どちらかというと潜在能力を引き出されているような…。それに最後の判断でさえ合理的。どこまでいっても科学者なんだろうな〜って感じですごい好感を持ったんだよな。
俺、グレース版の銀八先生みたいなやつ読みてえよ。たとえ諦めた夢からの「逃げ」だったとしても、子供にとっては授業が楽しみと思える先生は素敵だし、子供そのものの問題とも結局真面目に向き合ってくれそうだもんな。
え、てか、ウチ、平和IFロッキー不在時空の教師グレースで全然夢小説書けます㌔
いかがでしたでしょうか、本当に中身がない割に文章が多いですよね
喋るように文字打つんでしょうがないのですよ
そうやって読書感想文やレポートの字数を稼いで生きてきました
まあつまりおれ、この小説、好きでした
このあとよりハードで希望がなさそうな三体が待ってると思うと怖いです
おわり